食品の消費税1%法案が国会へ|補助金は賃上げが条件に(10月前半まとめ)
10月9日、食品の消費税を1%に下げる法案が国会に提出されました。値札が変わるかもしれない一方で、補助金は賃上げを条件にし始めています。
前回(9月後半のまとめ)は借入の金利の話でした。10月前半は、国が「値札」と「給与」の両方に手を入れ始めた2週間です。
食品の消費税1%法案が国会へ
政府は10月9日、飲食料品の消費税率を臨時に引き下げる法案(給付金とセット)を閣議決定し、第222回国会に提出しました。まだ法案で、成立は決まっていません。
| 項目 | 法案の内容 |
|---|---|
| 期間 | 令和9年4月1日〜令和11年3月31日の2年間 |
| 税率 | 飲食料品 8%→1%(国0.78%+地方) |
| 対象 | 今の軽減税率8%と同じ範囲。外食・酒類は10%のまま、新聞の定期購読は8% |
| 値札 | すぐ対応するのが難しい事情がある場合に限り、令和9年2月1日〜5月31日は、誤認させない掲示を条件に8%・1%どちらの税込表示も可 |
ほかに届出期限・中間申告の特例や、定期供給契約・通信販売に8%を残す経過措置もあります。国税庁は10月9日、申告書様式のドラフト版を特設サイトに掲載しました(システム開発事業者向けの事前公開で、正式版は後日)。
影響は業種で分かれます。簡易課税(売上から納税額を計算する方法)の食品販売業者には、成立すれば1%の食品売上の税額と同じ額を仕入税額として差し引く特例があります。食品部分は差し引きゼロになる計算で、3割特例なども同様です(令和8年度インボイス改正のポイント参照)。
一方、店内飲食が中心の飲食店は、売上が10%のまま、食材の仕入れが1%に下がります。本則課税(実際の仕入れの税額を差し引く方法)なら、差し引ける税が減り、納める消費税は増える方向です。仕入先が値下げに応じれば、仕入れで浮いた税を申告時にまとめて納める形になります。損得より先に、納税資金の確保が要点です。
レジは、デジタル化・AI導入補助金で、税率引下げに備えたスマートレジ導入・POSレジ改修を9月15日以降の導入分から事後に申請できる事前着手制度が告知されました。申請受付は2027年1月頃の見込みですが、対象枠や要件は未公表です。先に導入するなら見積書や領収書を残しておきましょう。
参考:内閣官房 消費税・給付関連ページ/国税庁 消費税率引下げ特設サイト/デジタル化・AI導入補助金 スマートレジ導入の事前着手について
補助金は賃上げが条件に
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の事務局は10月9日、第7次公募回から申請要件を追加すると告知しました。対象は通常枠・インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)・セキュリティ対策推進枠の4枠すべてで、「1人当たり給与支給総額(非常勤を含む全従業員)の向上」が求められます。最低賃金の改定に合わせ、通常枠の補助率引上げ要件と、4枠すべての加点要件も変わります。
小さなIT投資でも、賃上げの計画とセットになるということです。見るのは総額ではなく1人当たり。非常勤も含むので、短時間のパートを増やすと平均が下がる場合があります(数え方や伸び率は公募要領で確認を)。
賃上げ要件が付く前の最後の回は第6次で、締切は10月30日(金)17:00です。準備が間に合うかを見て、どちらの回で出すかを決めてください。
参考:デジタル化・AI導入補助金 第7次公募回以降における制度変更のお知らせ/同 公募スケジュール
倒産は人件費と滞納が重い
9月単月の倒産は、東京商工リサーチ(TSR)が831件(前年同月比4.8%減)、帝国データバンク(TDB)が800件(12.0%減)で、どちらも4か月ぶりに前年を下回りました。ただ年度上半期(4〜9月)は、TSR 5,373件(3.8%増)、TDB 5,362件(4.2%増)と増えています。集計基準が違うので、両社の数字は混ぜて比べないでください。
人手不足倒産はTSR 240件・TDB 225件で、どちらも上半期の過去最多。TSRではうち人件費高騰が130件と半数を超えました。TSRでは、税金(社会保険料を含む)の滞納による倒産も168件と前年同期の2倍です。
資金繰りが苦しいとき、後回しにされやすいのが税金と社会保険料です。払えないと分かった時点で、期限の前に税務署や年金事務所に相談してください。
参考:TSR 2026年9月の全国企業倒産/TSR 2026年度上半期の全国企業倒産/TSR 税金滞納倒産/TDB 2026年9月報/TDB 2026年度上半期報
東北の景気判断は引き上げ
日銀が10月8日に公表した地域経済報告(さくらレポート)で、東北の景気判断は「持ち直している」から「緩やかに回復している」へ引き上げられました。厚労省の毎月勤労統計(8月分速報)では、実質賃金が前年同月比1.5%増で8か月連続のプラスです。
参考:日本銀行 地域経済報告(2026年10月)/厚生労働省 毎月勤労統計 2026年8月分速報(PDF)
10月後半にやること
値札と給与は、別々のニュースでも自社の損益では同じ紙に乗ります。
- 価格表と給与表を並べる。来年の昇給の幅を先に決め、その分を価格に乗せられるか商品ごとに確かめる
- 食品を扱うなら、レジ・値札・申告方法を棚卸しする。レジの税率設定を変えられるか、値札の貼り替え手順、簡易課税か本則課税か。成立前でも把握だけはしておく
- 補助金の締切を確認する。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は10月30日(金)18:00(デジタル化・AI導入補助金の第6次は同日17:00)、事業承継・M&A補助金(十六次)は11月6日(金)17:00。省力化投資補助金(一般型)の第9回は12月下旬締切の予定です(公式スケジュール/他は前回のまとめ参照)
- 日銀会合(10月29日・30日)に備える。結果は未確定です。TDBは、借入金利が0.25ポイント上がると約2,700社が黒字から赤字に転じると試算しています(2026年9月報)
- 税金・社会保険料の納付資金を先に分けておく。法案が成立すれば、本則課税の飲食店は消費税の納付増も見込む