起業時の許認可|自分の事業に許可は要る?要否の調べ方と申請の段取り

もう店舗の物件を契約しましたか。会社の事業目的は決めましたか。——その前に、その商売に「許可」が要るかを確かめないと、契約も定款もやり直しになります。許認可は、出せば済む届出と違い、審査を通って初めて営業できる手続きです。これから起業する個人事業主・フリーランスや、会社設立を考えている方に向けて、要否の調べ方から申請の段取りまでを整理します。

結論:許認可は「物件契約・開業届・会社設立より前」に確かめる

許認可は、起業準備のいちばん最初に確認すべき作業です。順番を間違えると、後戻りの費用と時間がかかります。

  • 許認可は届出と違い、審査を通って初めて営業できる。無許可営業は罰則の対象になる
  • 要否は「①事業を一文にする → ②業種名で所管官庁を特定 → ③窓口へ確認」の3ステップでわかる
  • 個人は開業届・屋号と、法人は定款の事業目的・本店所在地と整合させてから動く

なぜ「最初」なのか:後回しが一番お金と時間を失う

許認可の確認を後回しにすると、すでに払ったお金が無駄になります。

たとえば飲食店は、店舗の設備が保健所の基準を満たさないと営業許可が下りません。物件を契約してから基準に届かないと気づけば、追加の改装費がかさむか、最悪その物件では開業できません。建設業のように審査に数週間から数か月かかる許可では、申請のタイミングを誤るだけで開業日が後ろにずれます。

会社をつくる場合は、もう一段の落とし穴があります。定款(会社の基本ルールを定めた書類)の「事業目的」に許認可業種を書いておかないと、その業種の許可申請ができません。設立後に気づくと定款変更という別の手続き・費用が発生します。許認可の要否は、物件選び・資金計画・会社設立のすべての前提になります。

「許認可」と「届出」はどう違うのか

まず押さえたいのが、規制の強さの違いです。同じ「役所への手続き」でも、出せば終わるものと、審査を通らなければ営業できないものがあります。

種類イメージ代表例
許可原則禁止を、審査のうえ解除する飲食店、建設業、古物商、人材派遣
登録要件を満たして名簿に登録する旅行業、電気工事業
免許行政庁が資格を与える宅地建物取引業、酒類販売
届出届け出れば開始できる(基準確認あり)理容所・美容所、クリーニング所
指定公的サービスの担い手として指定される介護・障害福祉サービス

「届出と許可は同じ」という思い込みは禁物です。届出は出せば済みますが、許可は審査に通って初めて営業できます。無許可で始めれば、営業停止や罰則の対象になり得ます。

必要かを調べる3ステップ

要否は、次の3ステップで最短に絞り込めます。

  1. 事業内容を一文にする:「何を・誰に・どこで・どう提供するか」を一文で書きます。同じ食品でも、店で出す(飲食店営業)のか、つくって売る(食品製造業)のかで、必要な許可が変わります。
  2. 業種名で所管官庁を特定する:「(業種名) 許認可」で検索します。窓口は保健所・警察署・都道府県・労働局・税務署など、業種ごとにばらばらです。
  3. 窓口へ確認する:要否だけでなく、要件と取得までの期間も聞いておきます。これがわかると開業スケジュールを逆算できます。

業種別の必要許可と窓口(代表例)

自分の業種がどこに該当するかの当たりをつけるための一覧です。

業種主な許認可窓口
飲食店飲食店営業許可(+食品衛生責任者)保健所
食品の製造・加工・販売営業許可/営業届出保健所
理容・美容開設の届出(+国家資格者)保健所
建設業建設業許可(一定規模以上)都道府県知事/国土交通大臣
中古品の売買古物商許可警察署(公安委員会)
人材派遣労働者派遣事業許可労働局
不動産の売買・仲介宅地建物取引業免許都道府県知事/国土交通大臣
旅行業旅行業登録都道府県/観光庁
酒類の販売酒類販売業免許税務署
産業廃棄物の収集運搬収集運搬業許可都道府県
介護・障害福祉事業者指定都道府県/市区町村
民泊住宅宿泊事業の届出 など自治体

※ 代表例です。提供方法や規模で要否・区分が変わり、一覧にない業種でも必要な場合があります。最終確認は必ず窓口で行ってください。

相談の多い4業種の費用と勘どころ

費用感とつまずきやすい点を、相談の多い4業種でまとめます。

業種費用(目安)勘どころ
飲食店自治体により異なる食品衛生責任者の設置と施設基準。内装工事の前に保健所へ事前相談する
建設業知事許可の新規は許可手数料9万円軽微な工事のみなら不要。金額は消費税込みで判定する
古物商申請手数料19,000円せどり・ネット中古品売買も対象。主たる営業所の管轄警察署へ申請
酒類販売登録免許税30,000円(1販売場)販売場ごとに免許。需給調整などの要件がある

飲食店の手数料は自治体によって異なり、固定額ではありません。金額より、内装工事の前に保健所へ相談して施設基準を満たせるかを確かめることが重要です。

建設業の「軽微な工事」とは、建築一式工事で請負代金1,500万円未満(または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅)、その他の工事で請負代金500万円未満を指します(いずれも消費税込みで判定)。これを超える工事を請け負うには建設業許可が必要です。営業所が1つの都道府県内だけなら知事許可、2つ以上の都道府県にまたがるなら大臣許可になります(区分は営業所の所在地で決まり、工事自体は全国で施工できます)。

個人事業主と法人で変わる点

要否や費用は事業の中身で決まるため、許認可そのものは個人でも法人でも基本は同じです。違いが出るのは、許認可を「自分の開業形態」とどう整合させるかです。ここを外すと、書類のやり直しが発生します。

観点個人事業主法人
整合させる相手開業届・屋号。屋号で許可を取るなら、開業届の屋号と申請名義をそろえる定款の事業目的。許認可業種を事業目的に書いていないと申請できない
申請の名義原則として個人(本人)名義で取得する法人名義で取得する。個人で取った許可は法人に引き継げないのが原則
管轄の決まり方営業所・住所の所在地で管轄が決まる本店所在地などで管轄が決まる。本店を移すと管轄も変わり得る
つまずきやすい点許可名義と屋号・開業届の不一致事業目的の書き忘れ。後から定款変更が必要になり費用がかかる

法人で特に多いのが、定款の事業目的の書き忘れです。許認可業種は、設立時の定款に「(その業種)に関する事業」と書いておかないと、許可申請を受け付けてもらえません。設立後に気づくと、株主総会での定款変更・登記変更という追加の手間と費用が発生します。会社設立の前に、取りたい許可の業種を事業目的へ漏れなく入れておくのが、個人にはない法人ならではの勘どころです。

なお、起業全体の進め方は起業ガイド、個人事業の開業の段取りは個人事業主の起業ガイド、会社設立と定款の組み立て方は法人の起業ガイドもあわせて参照してください。

申請の進め方

要否がわかったら、次の順で進めます。

  1. 要否と要件を確認:窓口で、必要な許可・満たすべき要件・取得までの期間を把握する
  2. 要件を満たせるか確認:資格者・設備・自己資本などをそろえられるか。審査に数週間から数か月かかることもある
  3. 必要書類を準備:申請書・図面・資格証明・登記事項証明書(法人)など
  4. 申請 → 審査 → 取得 → 営業開始:許可が下りるまで営業はできない

特に効くのが、物件契約の前に「その場所で許可が取れるか」を確かめること、そして法人なら設立時の定款に許認可業種を入れておくことの2つです。手続きが複雑な業種は、申請を専門に扱う行政書士に代行を依頼できます。また、クラウド会計freeeのfreee許認可では、事業内容から必要な許認可を調べたり、申請のサポートを受けたりすることもできます。

よくある失敗

  • 物件契約後に基準を満たせず許可が取れない(飲食店の施設基準など)→ 契約前に保健所へ事前相談する
  • 許認可業種と知らずに無許可営業(古物商・酒類販売など)→ 営業停止や罰則のリスク
  • 定款に事業目的を書き忘れる(法人)→ 設立後に定款変更が必要になり、別途費用がかかる
  • 個人で取った許可を法人に引き継げると思い込む→ 法人成りのとき、原則は取り直しになる
  • 資格者の確保が間に合わない→ 食品衛生責任者や有資格者の手配が遅れ、開業日がずれ込む

まとめ

許認可の要否は、開業スケジュール・物件選び・会社設立のすべてに直結します。次の3つを、物件契約や会社設立より前に進めておきましょう。

  1. 事業内容を一文で書き出す
  2. 「業種名+許認可」で所管官庁を特定する
  3. 窓口へ連絡し、要否・要件・取得までの期間を確認する

そのうえで、個人なら開業届・屋号と、法人なら定款の事業目的・本店所在地と整合させてから動けば、後戻りの費用を避けられます。手数料や基準は業種・自治体で異なり改正もあるため、最終確認は下記の一次情報で行ってください。

参考情報


最終更新:2026年6月30日。本記事は2026年6月時点の情報に基づきます。許認可の要否・要件・窓口・手数料は業種や自治体により異なり、改正されることもあります。具体的な手続きは所管の官庁・専門家にご確認ください。