宮城1098円へ|10月1日に人件費が二重で上がる(8月前半まとめ)

宮城県の最低賃金は、10月1日から1,098円になる見込みです。ただ、この10月に上がるのは時給だけではありません。8月前半のニュースを並べてみると、行き先はどれも同じ一日に集まります。

宮城は答申1,098円、目安を4円上回った

8月5日、宮城地方最低賃金審議会が宮城労働局長に答申を行いました。現行の1,038円から60円引上げ(引上げ率5.78%)の1,098円です。中央最低賃金審議会が7月28日に示した目安は、宮城が属するBランクで+56円。答申額はこれを4円上回りました(経緯は前回のまとめで整理しています)。

ただし答申は確定ではありません。所定の手続きを経て、都道府県労働局長が決定・公示してはじめて効力を持ちます。現時点の正しい言い方は「答申額1,098円・発効予定日10月1日」です。

落とし穴は発効日です。発効日は全国一律ではありません。宮城の昨年は10月4日、今年は10月1日の予定なので、「去年と同じ頃」と構えていると数日ぶん取りこぼします。複数の県に事業場がある会社は本社所在地ではなく事業場ごとに、各都道府県労働局の発表で答申額と発効予定日を最終確認してください。

参考:宮城労働局 令和8年度宮城県最低賃金の改正答申について厚生労働省 令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧

10月に「二重」で上がるのは、被保険者51人以上の会社

短時間で働く人が社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する要件のうち、「所定内賃金が月額8.8万円以上」という賃金要件が、令和8年10月に撤廃される予定です。いわゆる「106万円の壁」がなくなる、と言われているものです。

加入要件現在令和8年10月以降(予定)
週の所定労働時間20時間以上変更なし
所定内賃金月8.8万円以上撤廃予定
2か月を超える雇用の見込み要件あり変更なし
学生でないこと要件あり変更なし
企業規模被保険者51人以上令和9年10月に36人以上、令和11年10月に21人以上、令和14年10月に11人以上へ

ここが肝心です。令和8年10月の時点で対象になるのは被保険者が51人以上の企業。50人以下の会社は、労使の合意による任意適用を行っていない限り、影響が及ぶのは令和9年10月(36人以上)以降です。まず自社がどちらかを確認してください。

51人以上の会社では、10月に①最低賃金の引上げによる時給アップと、②賃金要件の撤廃による社会保険加入者の増加(=会社負担の保険料増)が同時に効きます。他の要件(週20時間以上・2か月を超える雇用の見込み・学生でない・企業規模)を満たせば時給の高低にかかわらず対象となり、壁は金額から時間へ移ります。「106万円を超えないように」とシフトを調整してきた方への説明が、9月中に必要です。

50人以下の会社にとっても、これは「関係のない話」ではなく「1年後に来る話」です。10月の時給改定でパートの月額がいくらになるかを今回いちど把握しておけば、令和9年10月の準備がそのまま済みます。なお施行時期は「令和8年10月」までの公表なので、日付は断定せず今後の政令等で確認してください。

参考:日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大

業務改善助成金は9月1日受付開始、交付決定が先

事業場内でいちばん低い賃金を引き上げ、あわせて生産性向上のための設備投資などを行った中小企業に対し、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するのが業務改善助成金です。助成されるのは賃金そのものではありません。令和8年度の交付申請の受付開始は9月1日です。

事故が多いのは順番です。厚生労働省のページには「交付決定後に計画どおりに事業を進め」「事業場内最低賃金の引上げや設備投資等は、これから実施するものが助成の対象となります」と記載されています。つまり交付決定が先、賃上げと設備投資が後。発効に合わせて先に時給表を書き換えてしまうと、その賃上げは対象になりません。受付開始は9月1日ですから、申請から交付決定までに要する期間によっては、10月1日の賃上げを助成対象にできない可能性があります。使う予定があるなら、9月の早い段階で労働局にスケジュールを確認してください。

正直に線を引くと、設備投資の予定がない会社、すでに事業場内最低賃金が高い会社は向きません。無理に対象になろうと不要な機械を買うのは本末転倒です。その場合は、10月の人件費増を価格に反映できるかの検討を先に。

参考:厚生労働省 業務改善助成金

金利は、返済表に何年も残る

8月3日、米国東部時間7月31日に日本国財務省が米国財務省と協調して円買い介入を実施した旨の財務大臣談話が公表されました。同じ8月3日、日本政策金融公庫(国民生活事業)の貸付利率が改定。令和8年8月3日現在の基準利率は、無担保3.60〜5.30%(税務申告を2期終えている方。2期終えていない方は3.55〜5.25%)です。

8月10日公表の日銀「主な意見」(7月30・31日開催分)では、緩和度合いの調整をペースアップする必要があるとの意見が示されました。会合自体は政策金利1.0%の据え置きを決定しています。9月の利上げは市場の観測であり、確定した話ではありません。介入の効果は一時的ですが、金利は川の水位そのもので、動けば返済表に何年も残ります。借入残高1,000万円で金利が0.25%上がれば、単純計算で年2.5万円の利息増。先に数字を出しておくと、借りる/借り換えの判断が感情論になりません(資金調達ガイド)。

参考:財務省 財務大臣談話(令和8年8月3日)日本銀行 金融政策決定会合における主な意見(2026年7月30・31日開催分)日本政策金融公庫 金利情報

10月に向けてやること

もうひとつ、10月1日には税務の変更もあります。免税事業者からの仕入れについて、仕入税額控除できる割合が80%から70%へ下がります(令和8年度税制改正)。10月をまたぐ取引の処理を経理担当と共有してください(詳細は令和8年度インボイス制度改正のポイント)。

やることを時系列に並べると、こうなります。

  1. 8月中:時給1,098円未満の人を洗い出す。県外に事業場があれば、その県の答申額と発効予定日を確認
  2. 8月中:自社の被保険者数が51人以上かを確認。該当するなら週20時間以上のパート・アルバイトを一覧化し、本人への説明を準備
  3. 9月1日以降:業務改善助成金を使うなら、交付決定を受けてから賃上げ・設備投資を実施できるよう早めに申請・相談
  4. 9月中:新しい時給での月次人件費(51人以上なら保険料の会社負担増も)を試算し、価格・シフト・受注量のどこで吸収するかを決める
  5. 10月1日:新時給の適用開始。仕入税額控除の割合も70%に変わる

8月のニュースは、ひとつずつ見れば「よそごと」に見えます。並べてみると、どれも同じ一日を指しています。カレンダーの10月1日に印をつけ、そこから逆算する。それが9月末までの仕事です。

参考:国税庁 令和8年度税制改正特集(インボイス制度関連)