未払賞与はいつ損金になる?退職者がいる場合の注意点を整理
決算直前に「賞与を未払計上できるか」という相談は多くあります。法人税では一定条件で未払賞与の損金算入が認められますが、要件は厳格です。特に退職者がいる場合の注意点を解説します。
企業では決算直前に「賞与を未払計上できるか」という相談が寄せられます。法人税では一定条件下で「未払賞与」をその年度の損金に計上することが認められていますが、要件を満たさないと損金算入できず、税務調査でも指摘されやすいポイントです。
特に注意が必要なのが「退職者への賞与の扱い」です。支給額の通知をしていても、支給日までに退職した従業員へ賞与を支給しない場合、未払賞与としての損金算入が認められないケースがあります。
未払賞与とは何か
通常、賞与は「実際に支払った日」の属する事業年度で損金になります。例えば3月決算の会社で6月に賞与を支払う場合、この賞与は翌期の費用になります。
しかし一定の条件を満たすと、まだ支払っていなくても「未払賞与」として当期の費用にできます。これは支給額が確定している、実際に近い時期に支払われるといった場合に限り認められる例外です。
未払賞与として損金算入するための3要件
①支給額を従業員ごとに通知している
各従業員に対し、個別に、同時期に、全従業員に賞与額を通知している必要があります。
②決算後1か月以内に支払う
通知した賞与は決算日の翌日から1か月以内に実際に支払う必要があります。
③その年度で損金経理している
決算書上も、その年度の費用として処理しておく必要があります。
よくある実務上の誤解
「賞与額を通知したから損金になる」——これは半分正しく、半分間違いです。
重要なのは「通知した全員に支払うこと」です。ここで問題になるのが「退職者」です。
退職者がいる場合の注意点
具体的なケース
- 3月決算
- 3月20日:賞与額を全従業員に通知
- 4月20日:賞与支払予定
- 4月10日:従業員Aが退職→賞与を支払わなかった
結論:未払賞与としての損金算入は認められません。
未払賞与の制度は「通知した賞与は必ず支払われる」という前提で認められているからです。通知したにもかかわらず実際には支払っていない場合、「賞与額が確定していない」と判断されます。その結果、通知した賞与の全額が当期の損金として認められないという扱いになります。
「支給日に在職する者のみ支給」は要注意
多くの会社では就業規則で「賞与は支給日に在職する者に支給する」と定めています。これは実務上よくある規定ですが、税務上は注意が必要です。
この規定がある場合、通知していても支給日までに退職した人には支払われないことになります。そのため税務では賞与額が確定していないと判断され、未払賞与の損金算入が認められない可能性があります。
まとめ
未払賞与は、条件を満たすと当期の損金にできますが、要件は非常に厳格です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 通知 | 全従業員へ個別に賞与額を通知 |
| 支払期限 | 決算後1か月以内に支払 |
| 全員への支払 | 通知した全員へ実際に支払う |
支給日までに退職した従業員に賞与を支払わない場合、未払賞与としての損金算入が認められない可能性があります。
決算直前に慌てて対応するのではなく、賞与制度や就業規則と税務の整合性を事前に確認しておくことが重要です。
参考:国税庁HP「No.5350 使用人賞与の損金算入時期」