2026年度の税制改正まとめ|決算・年末調整・確定申告はここが変わる

今年の年末調整は、還付がいつもより大きくなる社員が続出します。——なぜそうなるのか、社長は説明できますか?

2026年(令和8年)は、令和7年度・令和8年度と2年分の税制改正が同時に実務へ着地する、めずらしい年です。この記事では、法人決算・消費税・年末調整・確定申告で「いつ・何が・誰に効くか」を、実務カレンダーの順番で整理します。

結論:2026年からの変更点を1枚の地図に

要点は3つです。

  • 法人税は2026年4月が起点(防衛特別法人税は4月1日以後に開始する事業年度から、少額減価償却資産の拡充は4月1日以後の取得分から)
  • 消費税は2026年10月が節目(インボイス経過措置80%→70%、2割特例の終了)
  • 個人の所得税は12月の年末調整で一括精算され、毎月の手取りが変わるのは2027年1月から
いつ何が変わる誰に効く
2026年4月〜通勤手当・食事支給の非課税枠拡大(適用開始済み)給与計算をするすべての会社
2026年4月1日以後開始の事業年度防衛特別法人税の創設すべての法人(税負担は法人税額500万円超から)
2026年4月1日以後の取得分(施行日は要確認)少額減価償却資産の特例が40万円未満に拡充青色申告の中小企業者等
2026年10月1日免税事業者からの仕入税額控除が80%→70%に縮小。2割特例は「令和8年9月30日を含む課税期間」で終了インボイス未登録の取引先がある課税事業者/2割特例の利用者
2026年12月年末調整で基礎控除最大104万円・給与所得控除の最低保障74万円・扶養の所得要件62万円を一括精算給与を支払うすべての会社と従業員
2027年1月源泉徴収税額表の改定(毎月の手取りが変わるのはここから)給与計算をするすべての会社
2027年2〜3月令和8年分の確定申告(基礎控除104万円・2割特例ラストの申告)個人事業主・フリーランス

押さえ方のコツは「施行日」

今回の改正がややこしいのは、内容よりも適用開始日がバラバラなことです。しかも基礎控除は、令和7年度改正で決まったばかりの「最大95万円」が、令和8年度改正で「最大104万円」に1年で上書きされました。昨年の年末調整の知識のまま令和8年分を処理すると、金額を間違えます。

だからこの記事は、制度別ではなくカレンダー順で見ていきます。自社の決算期・給与計算・申告時期に重ねて読んでください。

決算から変わる法人税(2026年4月〜)

法人税は2つの改正が動きますが、適用の判定基準が異なります。防衛特別法人税は「事業年度の開始日」、少額減価償却資産の拡充は「資産の取得日」で判定します。混同しやすいので分けて見ていきます。

防衛特別法人税——多くの中小企業は実質負担なし、ただし対象は全法人

2026年4月1日以後に開始する事業年度から、法人税額(基準法人税額)から基礎控除500万円を差し引いた額に4%を課す防衛特別法人税が始まります。3月決算なら、2026年4月に始まった今期(2027年3月期)から適用され、2027年5月の申告で初めて登場します。

基礎控除500万円があるため、法人税額500万円以下(所得の目安で約2,400万円以下)の会社は実質負担なし。多くの中小企業にとって増税にはなりませんが、対象は法人税の申告義務があるすべての法人です。制度のしくみと申告実務は、別記事「防衛特別法人税とは」で詳しく解説しています。

少額減価償却資産の特例が「40万円未満」に拡充

中小企業者等が一定額未満の資産を一括で経費(損金)にできる特例が、令和8年度改正で「取得価額30万円未満」から「40万円未満」に拡充され、適用期限も2029年(令和11年)3月31日まで3年延長されました。年間合計300万円までの上限は従来どおりです。

一方で要件は一部厳しくなり、常時使用する従業員数が400人超(これまでは500人超)の法人は対象外になります。ほとんどの中小企業には関係ありませんが、規模の大きい会社は確認が必要です。

実務で効くのは、PC・什器・ソフトウェアなど「30万〜40万円」の価格帯の買い方が変わることです。これまで数年かけて償却していた40万円弱の資産が、一括で経費にできるようになります。

⚠ 購入のタイミングに注意 この特例は事業年度ではなく取得日で判定する制度です。拡充後の40万円基準は「令和8年4月1日以後に取得する資産から」とする解説が一般的ですが、正確な区切りは改正法の条文確認が必要です。30万〜40万円の資産をこれから買うなら、取得時期を経理処理とセットで検討してください。

続く制度・変わらない制度——「廃止」の報道に慌てない

賃上げ促進税制の「廃止」が報道されましたが、廃止されたのは大企業(全法人)向けの措置だけです(中堅企業向けは要件を引き上げたうえで存続)。中小企業向けは変更なく続きます。継続組は表で整理します。

制度中小企業向けのポイント適用期限
賃上げ促進税制給与総額+1.5%で15%、+2.5%で30%、上乗せで最大45%の税額控除。控除しきれない分は5年間繰越可2027年(令和9年)3月31日までに開始する事業年度
交際費の特例年800万円までの定額控除、1人1万円以下の飲食費の交際費除外は継続同上
法人税の軽減税率15%年所得800万円以下の部分(所得10億円超の年は17%)同上

いずれも期限は令和9年3月31日までに開始する事業年度。来年の令和9年度改正で延長されるかが次の論点です。

2026年10月:インボイスの節目が来る

消費税は2026年10月1日が大きな節目です。

1つめは、免税事業者(インボイス未登録の事業者)からの仕入。これまで支払った消費税相当額の80%を控除できた経過措置が、70%に縮小されます。その後も段階的に縮小し、最終的には控除できなくなります。

期間控除できる割合
〜2026年9月30日80%
2026年10月1日〜70%
2028年10月1日〜50%
2030年10月1日〜30%
2031年10月1日以後控除不可

外注先・仕入先に未登録の事業者がいる会社は、同じ支払でも納める消費税が増えることになります。

2つめは、2割特例の終了。売上税額の2割を納めればよい特例は「令和8年9月30日を含む課税期間」で終わります。個人事業主は令和8年分が最後です。令和9年分・10年分には個人事業主限定の「3割特例」(納税額=売上税額の3割、基準期間の課税売上高1,000万円以下)が新設されますが、法人は使えません。詳細は別記事「インボイス制度の令和8年度改正」をご覧ください。

2026年12月:年末調整が今年最大の山場

基礎控除は最大104万円——「178万円の壁」が今年の年収から

令和8年度改正で、基礎控除は本則62万円に引き上げられたうえ、令和8・9年分は上乗せ特例が付きます。結果、令和8年分の基礎控除はこうなります。

合計所得金額令和8年分の基礎控除
489万円以下104万円
489万円超655万円以下67万円
655万円超2,350万円以下62万円

※合計所得金額2,350万円超の方は、従来どおり基礎控除が縮小・消失します。

給与収入だけなら、おおむね850万円以下の人は104万円または67万円の恩恵を受けます。あわせて給与所得控除の最低保障額も74万円(令和8・9年分)に引き上げられ、基礎控除104万円+給与所得控除74万円=178万円まで所得税がかからない、いわゆる「178万円の壁」が今年の年収から実現します。

注意したいのは、令和7年度改正で決まった「95万円」が使われたのは令和7年分の1年だけだったことです。令和8年分に適用される前に令和8年度改正で上書きされたため、令和8年分の計算に95万円は登場しません。

還付が大きくなるカラクリ——天引きは11月まで変わらない

では、この引き上げはいつ給与に反映されるのか。ここが今年最大の誤解ポイントです。

改正の施行日は令和8年12月1日。つまり11月までの毎月の源泉徴収(天引き)は、従来の税額表のまま変わりません。改正の効果は12月の年末調整で、改正後の基礎控除額と改正後の年末調整用の表を使って年税額を計算し直し、取りすぎていた分を一括で精算する形で現れます。

2026年11月まで
毎月の天引きは従来どおり(旧税額表のまま。手取りは増えない)
2026年12月の年末調整
改正後の控除で年税額を計算し一括精算(還付が例年より大きくなりやすい)

1年分の控除引き上げ効果が12月にまとめて返ってくるため、還付が例年より大きくなる社員が続出します。冒頭の問いの答えがこれです。「今年は何かの間違いでは」と社員に聞かれる前に、経理担当と共有しておきましょう。なお、年末調整用の改正後の表と令和9年分の源泉徴収税額表は、2026年8月末頃に国税庁HPに掲載予定です。

扶養の範囲が広がる——家族の「壁」は給与収入136万円に

扶養親族・同一生計配偶者の所得要件も、58万円以下から62万円以下(給与収入136万円以下)に引き上げられます。これまで扶養に入れなかった給与収入123万円超136万円以下の家族が、令和8年分から新たに扶養控除の対象になり得ます。

実務では、新たに扶養に入る親族がいる従業員に扶養控除等(異動)申告書へ「令和8年12月1日 改正」等と記載して提出してもらう必要があります(12月1日より前から受け付けて差し支えないとされています)。一方、11月30日以前に支払う給与では、新基準の親族を扶養親族等の数に含めない点に注意してください。

このほか、配偶者特別控除の対象は給与収入207万円以下に広がり、19〜22歳の子などの特定親族特別控除の対象は給与収入136万円超197万円以下に変わります(136万円以下なら通常の扶養控除・特定扶養親族の対象です)。また、23歳未満の扶養親族がいる従業員は、一般生命保険料(新契約)の控除上限が4万円→6万円に上乗せされるため、保険料控除申告書のチェックも忘れずに。4月から拡大した通勤手当・食事支給の非課税枠を正しく処理できていたかも、年末調整前に確認しておきたいポイントです。

2027年1月:毎月の手取りが変わるのはここから

毎月の給与の手取りが実際に増えるのは、令和9年(2027年)1月1日以後に支払う給与からです。改定された源泉徴収税額表がここから適用されます。「12月から手取りが増える」ではありません。

なお、令和9年1月からは源泉徴収の内訳が「所得税+防衛特別所得税(所得税額の1%)+復興特別所得税(同1.1%)」に変わりますが、合計2.1%は従来と同じなので、天引き額の計算方法は変わりません。

2027年2〜3月:令和8年分の確定申告はここを確認

個人事業主・フリーランスの令和8年分申告(2027年2〜3月)のポイントです。

  • 基礎控除104万円(合計所得489万円以下の場合)は事業所得者にも適用。納税額の見積もり・納税資金の準備が昨年と変わる
  • 2割特例はこの申告が最後。令和9年分からは個人限定の3割特例へ移行するか、簡易課税・原則課税を選ぶ
  • iDeCoの掛金増額は令和8年分にはほぼ効かない。2026年12月に拠出限度額の引き上げが予定されていますが、掛金の所得控除は「支払った年」基準。増額分の引き落としが2027年1月なら、控除が効くのは令和9年分からです
  • ひとり親控除の38万円への引き上げ、青色申告特別控除の拡充(最大75万円)は令和9年分以後。令和8年分は従来どおり

まとめ:自社に効く項目をチェック

最後に、自社・自分への影響をセルフチェックしましょう。

1つでも当てはまれば、今年の改正が実務に効きます
  • 2026年4月以後に30万〜40万円の設備・PCを購入する予定がある
  • インボイス未登録の外注先・仕入先がある(10月から控除70%)
  • 従業員の家族に給与収入123万〜136万円の人がいる(新たに扶養に入れる可能性)
  • 法人税額が500万円を超える年がある(防衛特別法人税の対象)
  • 2割特例で消費税を申告している(令和8年分が最後)

今日からできる行動提案

  1. 経理担当と「11月まで天引きは変えない・12月の年調で一括精算・税額表の改定は1月から」の3点を共有する
  2. インボイス未登録の取引先を一覧にし、10月以降の消費税負担の増加額を試算する
  3. 年末調整の案内に「ご家族の年収確認(給与収入136万円以下なら扶養に入れる可能性)」の一文を加える

参考情報