月次資金繰り表の作り方|完成例で分かる書き方と3か月先の資金の読み方

資金繰り表は、3か月先の“お金の天気”を先に知るための1枚です。作り方さえつかめば、資金の不安はぐっと軽くできます。天気予報が「明日は雨だから傘を持とう」を教えてくれるように、資金繰り表は「2か月後にお金が足りなくなりそうだから、今のうちに手を打とう」を教えてくれます。この記事では、実際の数字で埋めた完成例を見ながら、そのまま真似できる作り方を解説します。

資金繰り表は「未来の天気予報」

経営者がよく見る損益計算書(PL)は、いわば“過去の通知表”です。先月いくら儲かったかは分かりますが、来月お金が回るかは教えてくれません。一方、資金繰り表はこれから先の入金・出金を並べた“未来の予報”です。

なぜ両方が必要かというと、利益と現金は別物だからです。売上が立っても入金は翌月・翌々月、仕入代金の支払いは先、という会社では、「黒字なのに預金が減っていく」ことが普通に起きます。天気予報を見ずに傘を忘れるように、資金繰り表を見ないと「気づいたら資金ショート寸前」になりかねません。

まずは完成した資金繰り表を見てみる

言葉で説明するより、1枚見るのが早道です。小売・サービス業の小さな会社(月商400万円規模)が、4〜6月の3か月を予測した例です(単位:万円、△は出ていくお金)。

項目4月5月6月
前月繰越(月初の現金・預金)300322194
売上入金400300280
仕入・外注費△160△150△140
人件費(役員報酬・給与)△120△120△120
家賃△25△25△25
その他経費△40△40△40
支払利息△3△3△3
経常収支(A)52△38△48
借入金の返済△30△30△30
設備投資(エアコン更新)△60
財務・経常外収支(B)△30△90△30
翌月繰越(月末の現金・預金)322194116

この表が伝えているのは、次のような“天気”です。手元資金が300 → 322 → 194 → 116万円と、右へ行くほど細っています。とくに5月は、売上が落ちたところに設備投資(エアコン更新60万円)が重なり、1か月で128万円も減りました。もし7月以降もこの傾向が続けば、数か月で手元資金が尽きる——それが2か月前の時点で見えている、これが資金繰り表の力です。

表を3つのブロックで読む

資金繰り表は、上から順に3つのかたまりに分けて読むと理解しやすくなります。

経常収支(本業のお金)売上入金から、仕入・人件費・家賃などの支払いを引いた本業の増減。ここが継続的にプラスかがいちばん大事
経常外・財務収支借入・返済・設備投資など、毎月は起きない大きなお金の動き。ここで手元資金が大きく振れる
翌月繰越(月末残高)前月繰越+経常収支+財務収支。これが会社の“お金の体力”。マイナスに近づく月がないかを見る

見るべき優先順位は明確です。まず経常収支(A)が毎月プラスか。本業でお金が回っていれば会社は続きます。上の例では5月・6月の経常収支がマイナスで、本業だけで手元が減り始めているという黄信号が読み取れます。借入でしのげても、それは一時的な傘にすぎません。

資金繰り表の作り方(4ステップ)

特別なソフトは不要です。表計算ソフト(Excel・スプレッドシート)で十分作れます。

1
過去2〜3か月の「実績」を埋める預金通帳と月次試算表を見ながら、直近数か月の入金・出金を実額で書き込む。いきなり未来を予測せず、過去の実績から始めるのがコツ。自社のお金の動きの“クセ”が見えてくる。
2
先3〜6か月の「予定」を入れる確定している入金(受注済みの売上)・支払い(仕入・給与・家賃・返済)を、それぞれ実際に現金が動く月に入れる。売上の計上月ではなく、入金される月に置くのが最重要ポイント。
3
合計を自動計算にする経常収支・財務収支・翌月繰越は、Excelの数式で自動計算されるようにする。数字を1か所変えると先の残高まで一気に更新され、「売上が1割落ちたら2か月後どうなるか」を即座に試せる。
4
毎月末に実績を上書きし、予定を伸ばす月が終わったら予定を実績に置き換え、いちばん先の月に新しい予定を1か月足す。これを続けるだけで、常に3〜6か月先が見える状態を保てる。

まったくゼロから作るのが難しければ、日本政策金融公庫が資金繰り表のExcel様式と記載例を無料で配布しています(後掲の参考情報)。まずはこれを埋めるところから始めるのが近道です。

よくある誤解:「黒字なのにお金がない」の正体

利益が出ているのに預金が減る——これは異常ではなく、売上の入金より支払いが先に来る会社では自然に起きる現象です。原因の多くは「売掛金の回収が遅い」「在庫を持ちすぎ」「借入の返済が利益以上」。資金繰り表を作ると、この“利益と現金のズレ”が数字で見えるようになります。

とくに成長中の会社ほど、売上が伸びるほど仕入・人件費の先払いが増え、黒字なのに資金が苦しくなる(黒字倒産のリスク)ことがあります。だからこそ、利益の管理(PL)とは別に、現金の管理(資金繰り表)が欠かせません。

今日からできること

  • まず直近3か月の実績を、通帳を見ながら1枚の表に書き出してみる
  • そこに先3か月の予定を、入金・支払いが実際に動く月に置いて伸ばす
  • 経常収支(本業のお金)がマイナスに沈む月がないかを確認する。あれば、その2か月前が対策のタイミング
  • 手元資金が細りそうと見えたら、苦しくなる前に金融機関へ相談する(融資のリスケジュールとはも参考に)

まとめ

資金繰り表は、会社のお金の“天気予報”です。損益計算書が過去を映すのに対し、資金繰り表はこれから先の入出金を並べ、資金ショートを前もって知らせてくれる1枚です。作り方は「過去の実績を埋める → 先の予定を入れる → 自動計算にする → 毎月更新する」の4ステップだけ。完成例のように、手元資金が細る月が2か月前に見えていれば、打てる手はまだ残っています。まずは通帳を片手に、直近3か月分から書き始めてみてください。

開業前の必要資金の見積もりは「開業資金と運転資金の計画の立て方」、融資全体の流れは「借入による資金調達ガイド」にまとめています。

参考情報