決算対策・利益調整の基本|法人が決算前にやるべき節税チェックリスト
法人の決算前に検討すべき利益調整・節税対策を解説。役員報酬の見直し・未払費用の計上・短期前払費用・減価償却・決算賞与など、合法的に法人税を抑えるための実務チェックリストです。
決算対策は「決算日の3ヶ月前」から始める
法人の節税対策は、決算日の直後ではなく決算日の2〜3ヶ月前から動き始めるのが鉄則です。
決算日を過ぎてからできる対策はほとんどありません。「今期の利益が出そう」と気づいたときには、すでに使える手段が限られていることが多い。
この記事では、決算前に検討すべき主な対策を優先度別に整理します。
大前提:節税の考え方
決算対策には「利益を減らす(経費を増やす・収益を翌期に繰り延べる)」という考え方が基本にあります。ただし、架空の経費計上や売上の隠蔽は脱税です。
合法的な節税とは「税法上認められた制度を正しく使うこと」です。
チェックリスト①:役員報酬・賞与の活用
役員賞与(事前確定届出給与)
通常の役員賞与は損金(経費)になりませんが、税務署に「事前確定届出給与」を届け出ておけば経費にできます。
- 届出の期限:株主総会決議日から1ヶ月以内、または事業年度開始から4ヶ月以内の早い方
- 届出した金額・支給日と「完全に一致」する必要がある(金額や日付が1円でもずれると損金不算入)
→ 決算前ではなく、事業年度開始時点での計画が必要
従業員への決算賞与
決算期に従業員へ賞与を支給する場合、以下の要件を満たせば「未払賞与」として当期の経費にできます。
- 決算日までに全従業員に賞与金額を通知していること
- 決算日翌日から1ヶ月以内に支払うこと
- 通知内容を書面で保存すること
チェックリスト②:未払費用の計上
決算日までに費用が発生しているが、支払いが翌期になるものは「未払費用」として計上できます。
よくある例:
- 決算月の顧問料・コンサル料(翌月支払い)
- 決算日までに業務が完了しているが請求書が来ていない外注費
- 決算期の広告費(掲載済みで請求書が翌月)
「決算日時点で債務が確定しているか」が判断基準です。見積もりや予定では計上できません。
チェックリスト③:短期前払費用の特例
将来の役務提供に対して前払いした費用のうち、役務提供開始から1年以内のものは、支払時に全額経費計上できます(短期前払費用)。
活用例:
- 事務所家賃を1年分まとめて前払い
- 保険料を1年分前払い
- SaaSやサブスクの年間プランを前払い
ただし、毎年同じように処理する継続適用が条件です。今期だけ前払いして来期は月払いに戻す、という使い方はできません。
チェックリスト④:減価償却の確認
固定資産(機械・設備・車両・PCなど)の減価償却費を適切に計上しているか確認します。
- 30万円未満の資産(中小企業特例):全額を当期の経費にできる(青色申告法人)
- 高額な資産:法定耐用年数で分割計上。今期分を漏れなく計上しているか確認
また、使用していない資産・廃棄した資産がある場合は「除却損」として損金算入できます。
チェックリスト⑤:在庫・棚卸資産の評価
在庫がある業種では、決算時の棚卸評価が利益に直結します。
- 破損・陳腐化した在庫は「評価損」として計上可能(要件あり)
- 売れ残りが明らかな商品を適切に評価しているか確認
チェックリスト⑥:小規模企業共済・経営セーフティ共済
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)
取引先の倒産時に備える共済制度ですが、掛け金が**全額損金(経費)**になります。
- 月額掛け金:5,000円〜20万円(年間最大240万円)
- 解約時に掛け金の最大95%が戻る(益金算入されるため利益調整が必要)
- 加入から40ヶ月以上で解約金が100%返戻
利益が出た年に加入・増額し、利益が少ない年に解約するという利益平準化の手段として活用できます。
チェックリスト⑦:生命保険の活用
法人で生命保険に加入し、保険料を経費計上するという手法は以前より制限されましたが、一定の保険は引き続き損金算入できます。
ただし、2019年の税制改正以降、節税効果は以前より小さくなっています。保険の節税活用を検討する場合は、最新の税務取扱いを確認した上で判断してください。
決算対策の優先順位まとめ
| 対策 | 効果 | 決算前の準備 |
|---|---|---|
| 決算賞与(従業員) | 大 | 1ヶ月前に通知 |
| 未払費用の計上 | 中〜大 | 決算日までに確認 |
| 短期前払費用 | 中 | 決算前に前払い実行 |
| 減価償却の確認 | 中 | 固定資産台帳の確認 |
| 経営セーフティ共済 | 大 | 加入手続き(月次) |
| 30万円未満資産の購入 | 中 | 決算日までに取得 |
今日からやること
① 今期の利益見込みを確認する 売上・経費の集計から、決算時の予想利益を計算します。
② 決算日3ヶ月前から税理士・公認会計士と打ち合わせを設定する 対策の多くは「決算日前に実行する必要」があります。直前では間に合わない手段もあります。
③ 経営セーフティ共済の加入状況を確認する 未加入の場合は、今から加入するだけで今期の利益を圧縮できます。
決算対策は「毎期の早めの動き出し」が肝心です。「今期の決算に向けて何ができるか確認したい」という方は、決算日の2〜3ヶ月前にご相談ください。
本記事は2026年5月時点の情報に基づいています。個別のご事情により取り扱いが異なる場合があります。詳細は税理士・公認会計士にご相談ください。