令和8年熊本地震で使える支援と税制まとめ|4つの指定と市町村の違い

令和8年熊本地震で亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、被災されたすべての方に心よりお見舞い申し上げます。

宇城市の事業者は、何もしなくても税の申告・納付の期限が延びます。でも熊本市の事業者は、申請しないと延びません。

同じ地震でも、「指定」の種類と市町村によって、使える制度が変わります。2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震(M7.1〈暫定〉、最大震度7。2016年の平成28年熊本地震とは別の地震です)について、個人と事業者が使える支援と税制を整理します。情報は2026年9月24日時点のものです。

結論:4つの「指定」で、動き出す制度が決まる

今回の地震には、国の4種類の指定がすべて出ています。災害時の制度の多くは法律に常設され、指定が出ると動き出します。

指定今回の指定日・対象地域主に動く制度(個人・家族)主に動く制度(事業者)
災害救助法2026年7月28日/熊本県の21市町村(10市10町1村)避難所・応急仮設住宅、住宅の応急修理などの現物支援/自然災害債務整理ガイドライン(被災ローンの減免)セーフティネット保証4号/雇用保険の基本手当の特例(従業員向け)/自然災害債務整理ガイドライン(個人事業主)
被災者生活再建支援法8月10日/熊本県全域被災者生活再建支援金(最大300万円)/住宅ローン控除の重複適用/被災自動車の自動車重量税の還付/建替え等の契約書の印紙税非課税/代替建物の登録免許税の免税住宅向けの制度が中心。店舗・事業用建物は支援金の対象外
激甚災害(本激)8月7日指定(9月17日に措置を追加)/地域の限定なし直接の給付はなし(道路・農地・学校などの復旧を国が手厚く補助し、復旧が進みやすくなる)直接の給付はなし(同左)
激甚災害(局激)8月28日施行/八代市・宇城市・御船町・嘉島町・氷川町―災害関係保証(さらに別枠の信用保証)/公庫の災害復旧貸付の金利引下げの対象地域にも
特定非常災害8月7日指定(発生日は7月28日)雑損失の繰越が3年→5年/相続の承認・放棄を決める期間の延長/運転免許など許認可の有効期間の延長/半壊家屋の公費解体純損失の繰越が3年→5年/消費税の届出の特例/被災代替資産の特別償却/届出義務の履行遅れの免責/法人の破産手続開始決定の留保

激甚災害には全国が対象の「本激」と、市町村を限った「局激」があります。特定非常災害は、特に被害の大きい災害として政令で指定され、税や期限の特例が一斉に動きます。指定がなくても使える制度は、本文で「常設」と記します。

同じ地震でも、市町村で使える制度が違う

国税の自動延長は4市町、局激は5市町、災害救助法は21市町村、被災者生活再建支援法は熊本県全域と、対象地域がそろっていません。

市町村国税の申告・納付期限社会保険料・労働保険料局激の保証・公庫の金利引下げ災害救助法(セーフティネット保証4号など)
八代市・宇城市・氷川町自動で延長(申請不要)納期限を延長対象対象
宇土市自動で延長(申請不要)納期限を延長対象外対象
御船町・嘉島町申請が必要(個別指定)納付が難しければ猶予を申請対象対象
上記以外の災害救助法の適用市町村(熊本市・水俣市・山鹿市・菊池市・天草市・上天草市・合志市・美里町・西原村・益城町・甲佐町・菊陽町・芦北町・大津町・津奈木町)申請が必要(個別指定)納付が難しければ猶予を申請対象外対象
熊本県内のその他の市町村申請が必要(個別指定)納付が難しければ猶予を申請対象外対象外

※国税は納税地、社会保険料は事業所の所在地で判断。被災者生活再建支援金と2つの補助金(後述)は県内全域が対象です。

冒頭の宇城市を含む4市町は「地域指定」の対象で、7月28日以降の国税の申告・納付などの期限が、すべての税目で申請なしに延びています(毎月10日納期限の源泉所得税も含む)。熊本市などそれ以外の地域は、税務署長の承認を受けると、理由がやんだ日から2か月以内の範囲で延びます(個別指定。常設の仕組み)。

見落としやすいのは、期限延長の対象なのに局激の対象外の宇土市と、局激の対象なのに国税は申請が必要な御船町・嘉島町です。

個人・家族の支援は「罹災証明書」から始まる

罹災証明書(住まいの被害の程度を市町村が証明する書類)は、多くの制度の入口です。今回は写真の添付が原則不要で、宇城市・八代市はオンライン申請もできます。修理や解体の前に被害箇所を4方向から撮影しておくと、税の申告の資料にもなります。

住まいの再建:支援金と応急修理

被災者生活再建支援金は、被害の程度による基礎支援金(全壊など100万円、大規模半壊50万円)と、再建方法による加算支援金(建設・購入200万円、補修100万円、賃貸50万円)の合計です。中規模半壊は加算のみで半額、単身世帯は4分の3です。

申請期限は基礎支援金が災害発生日から13か月、加算支援金が37か月以内です。店舗や空き家は対象外です。

住宅の応急修理は現金ではなく、自治体が業者に発注して直す現物の支援です(半壊以上で1世帯757,000円以内)。

税:雑損失の繰越は「5年」に延びる

雑損控除と災害減免法の違いは別記事で解説しています。今回押さえたいのは次の2点です。

  • 本人だけでなく、生計を一にする親族(令和8年分は総所得金額等62万円以下)が持つ住宅・家財の損害も対象になる
  • 引ききれなかった損失(雑損失)の繰越は通常3年ですが、特定非常災害による損失は5年に延びます(令和5年4月1日以後に発生した特定非常災害が対象で、今回の地震は該当)

ご家族を亡くされた場合、借入れが返せない場合

  • 災害弔慰金:生計を維持していた方が亡くなった場合500万円、その他の方は250万円。災害関連死も審査のうえ対象になり得ます
  • 相続の熟慮期間:7月28日時点で災害救助法の適用区域に住所がある相続人は、7月28日以後に期限を迎える熟慮期間(相続の承認・放棄を決める期間)が令和9年3月31日まで延びています
  • 自然災害債務整理ガイドライン:ローンの返済が難しくなった個人(個人事業主を含む)は、免除・減額を申し出られます。信用情報に登録されず、専門家の費用は無料です

事業者の資金繰り:使える「枠」の数は地域で違う

  1. 日本政策金融公庫の災害復旧貸付(常設):国民生活事業は各融資制度に上乗せで3,000万円、中小企業事業は別枠で1億5,000万円。局激の5市町で被害の証明を受けた事業者は、融資後3年間、金利が0.9%引き下げられます(1,000万円まで)
  2. セーフティネット保証4号:信用保証協会の保証(公的機関が借入れを保証する仕組み)のうち、通常の保証とは別枠のもの。災害救助法の21市町村が対象で、100%保証・最大2.8億円
  3. 災害関係保証(局激):通常の保証・4号ともさらに別枠。局激の5市町が対象で、100%保証・最大2.8億円

今ある借入れの返済条件の変更には柔軟に応じるよう、金融庁などが金融機関に要請しています。

気をつけたいのは、融資は返すお金だという点です。先に「返さなくてよいお金」(支援金・補助金・税の還付)と「待ってもらえるお金」(期限延長・納税の猶予・返済条件の変更)を洗い出し、足りない分を融資で埋めると、借りすぎを防げます。

事業者の税:延長・猶予・還付を使い分ける

期限延長に加えて、次の制度があります。

  • 災害による納税の猶予(常設):財産に相当な損失(全積極財産のおおむね20%以上)を受けた場合、納期限から1年以内の猶予。災害のやんだ日から2か月以内に申請
  • 法人の繰戻し還付(常設):災害から1年以内に終わる事業年度の災害損失欠損金は、前期以前の法人税から還付を受けられる
  • 個人事業者の純損失:被災事業用資産の損失など(事業用資産の損失割合が10%以上なら純損失の全額)を5年繰り越せる。青色申告なら前年への繰戻し還付も選べる
  • 消費税:設備の買い直しで還付が見込めるなら、簡易課税の選択・取りやめの承認申請(常設)や、課税事業者の選択などの届出の特例(特定非常災害)がある。申告前に試算を

還付が見込まれるなら、期限の延長中でも早めに申告したほうが資金の戻りが早くなります。

特定非常災害の指定により、事業報告書の提出など法令上の届出が期限に間に合わなくても、令和8年11月27日までに済ませれば行政上・刑事上の責任を問われません(税や保険料の納付を免除するものではありません)。

従業員が被災した場合

住宅・家財の損害が価額の2分の1以上で、合計所得金額の見積額が1,000万円以下の従業員は、給与の源泉所得税の徴収猶予や還付を受けられます。知らない従業員も多いため、会社から伝えるだけでも助けになります。

補助金・助成金:受付と締切が10月に集中

くまもと事業者再出発支援補助金(工場・店舗・機械の復旧)

国の支援パッケージにもとづき熊本県が行う補助金です。国の「なりわい再建支援補助金(グループ補助金)」そのものではなく、グループを組む必要もありません。

  • 対象:熊本県内に事業所がある中小企業・小規模事業者(個人事業主を含む)と中堅企業
  • 補助率・上限:中小企業等は3/4、中堅企業は1/2。上限は1事業者3億円。コロナの影響、過去10年度以内の激甚災害での被災など5つの要件をすべて満たす「多重被災事業者」は、5億円まで定額補助(上限15億円)
  • 受付:10月1日(木)から第一次申請(その後は毎月、期間を区切って受付予定)。郵送または持参
  • 7月28日以降に自費で先に直した分も、写真などで被害を確認できれば対象
  • 要件:事業継続計画(BCP)の策定と、施設・設備への自然災害の損害保険・共済の加入(中小企業等は付保割合30%以上、中堅企業は40%以上。小規模事業者は加入推奨)
  • 説明会:10月2日〜16日(宇土・八代・熊本・御船)

注意したいのは、同じ施設・設備に国や県の他の補助金を重ねて使えない点です。持続化補助金で直す設備と分けるなど、申請前に商工会・商工会議所と整理してください。内容は9月18日時点のものです。

持続化補助金の災害支援枠:確認書は10月9日まで

小規模事業者持続化補助金〈一般型 災害支援枠(令和8年熊本地震)〉は、県内の被災した小規模事業者が、商工会・商工会議所と計画をつくり、設備の復旧や販路の再開に使える補助金です。上限は直接被害200万円・間接被害(売上減少)100万円、補助率は補助対象経費の3分の2以内です。発災日以降の経費もさかのぼって対象になり得ます。

1次公募の受付は令和8年9月16日(水)〜10月16日(金)17:00(商工会地区の郵送は当日消印有効)。申請に必要な支援機関確認書の発行受付は、商工会・商工会議所どちらの地区も10月9日(金)までで、ここが実質的な締切です。

雇用調整助成金の特例は、地震の影響で7月28日〜令和9年1月27日に休業などを始めた事業主が対象です。確認期間の短縮などの緩和は全国の事業所に適用され、取引先の被災で操業を落とした県外の企業も使える可能性があります。

注意点:延長・猶予は「免除」ではない

期限の延長や納税の猶予は、払う時期が後ろにずれるだけです。4市町では延長後の期限が今後告示される期日に集まり、申告・納付が重なる可能性があります。延長中も帳簿の整理を止めず、納付資金の目安をつけておいてください。

⚠ 2026年9月24日時点で、まだ決まっていないこと・確認が必要なこと
  • 八代市・宇土市・宇城市・氷川町の国税の延長後の期日(国税庁が別途告示)
  • 消費税の届出特例の期限:決め方は国税庁告示第22号で公表済み(4市町は国税の延長後の期日と同じ日、個別指定を受けた人は税務署長が指定した日、その他は今後の告示)。具体的な日付は未定
  • 地方税の減免:自治体ごとに異なる。熊本県は県税(個人事業税・不動産取得税・自動車税)の減免の相談窓口を案内。市町村税は各市町村で確認
  • 前年分(令和7年分)の所得税で雑損控除を受けられる特例は、今回の地震では確認できていません
期日や要件が決まると、国税庁・内閣府・熊本県などの特設ページで公表されます。

まとめ:次の災害でも、確認することは同じ

使える制度は「どの指定が出たか」と「どの市町村か」でほぼ決まります。

自分に関係する制度を確かめる
  • 住まいが被害を受けた → 罹災証明書を取り、支援金・応急修理・雑損控除(繰越5年)を確認
  • 店舗・工場・機械など事業用の施設・設備が壊れた → くまもと事業者再出発支援補助金(10月1日受付開始)
  • 県内の小規模事業者で、設備や販路の復旧費用がある → 持続化補助金の災害支援枠(支援機関確認書は10月9日まで)
  • 事業所が八代市・宇城市・御船町・嘉島町・氷川町にある → 災害関係保証と公庫の金利引下げを確認
  • 納税地が八代市・宇土市・宇城市・氷川町以外で、期限に間に合わない → 税務署に個別指定を申請
  • 従業員が被災した → 源泉所得税の徴収猶予・還付を案内
  • 県外だが、取引先の被災で休業を考えている → 雇用調整助成金の特例(全国対象の部分)

今日からできる行動提案

  1. 持続化補助金を使うなら、今週中に地元の商工会・商工会議所へ連絡する(支援機関確認書は10月9日(金)締切)。施設・設備の被害が大きければ、県の補助金説明会にも参加する
  2. 罹災証明書・被害証明、修理の見積書・領収書、被害箇所の写真を1か所にまとめる。支援金・補助金・融資・税の申告のすべてで使います
  3. 納税地と事業所の所在地を市町村の表に当てはめ、期限延長が自動か申請か、保証の枠はいくつかを確かめる。4市町の方は、延長後の期日の告示を国税庁の特設ページで確認する

参考情報