固定資産と減価償却の完全ガイド|10万・20万・40万円の分かれ道

40万円のパソコンを買った月、通帳からは40万円が出ていきます。ところが、その年の経費になるのは数万円だけです。残りは決算書に「資産」として残り続けます。

はじめて10万円を超えるものを買った経理担当者がつまずくのが、このお金の動きと経費の金額が一致しない感覚です。しかもここを間違えると、翌年以降の決算にも、1月に提出する償却資産税の申告にも、資産を捨てるときにまで影響が続きます。

この記事では、買ったものが固定資産になるかどうかの判定から、毎年の償却、手放すときの処理までを一通り整理します。記載は2026年8月時点の法令に基づきます。

なぜ全額を経費にできないのか

考え方はシンプルです。何年にもわたって使うものは、使う年に分けて費用にする。パソコンを4年使うなら、その4年間の売上に貢献するのだから費用も4年に分ける、という発想です。

ここで支出(お金が出ていくタイミング)と費用(経費に計上するタイミング)がずれます。買った年は40万円が出ていくのに経費は数万円だけ、2年目以降はお金が動かないのに経費だけ計上される。この「お金が出ていかない経費」が減価償却費です。「利益は出ているのに現金がない」と感じる原因の多くは、ここにあります。

そして何年で分けるかは、会社が自由に決められません。「3年で使い切るつもり」と考えても、税務上は法定耐用年数という国が定めた年数で計算します。勝手に短くした分は、損金(=法人税を計算するうえで、利益から差し引ける金額)として認められません。会計上は費用にできても税務上は損金にならない、というずれが起きます。以下、税金の話をするときは「経費」ではなく「損金」と表記します。

固定資産になるかは、金額で決まる

買ったものを固定資産として処理するかどうかは、原則として取得価額(買うのにかかった金額)で機械的に分かれます。分かれ道は3つです。

10万円未満
その年に全額経費
少額の減価償却資産(法人税法施行令133条)。使い始めた事業年度に費用処理すれば全額が損金になります
10万円以上20万円未満
3年で均等に
一括償却資産(同133条の2)。合計額の3分の1ずつを3年間で損金にします
20万円以上
通常の減価償却
法定耐用年数で毎年少しずつ。ただし中小企業者等には後述の特例があります

10万円未満の全額経費は、使い始めた事業年度に費用処理した場合に認められます。うっかり資産に計上し、翌期に「やはりまとめて経費にしたい」と考えても、後の年度で一括して損金にすることはできません。

一括償却資産の特徴は月割りをしないことです。通常の減価償却は使い始めた月から期末までの月数で按分しますが、一括償却資産は決算月に買っても初年度から3分の1を損金にできます。期末近くに備品をまとめて買うなら、この違いは無視できません。

中小企業者等の特例で、20万円以上でも一発で落とせる

青色申告をしている中小企業者等には、取得価額が一定額未満の資産を使い始めた年に全額損金にできる特例(租税特別措置法67条の5)があります。この金額基準が、令和8年度税制改正で引き上げられました。

項目令和8年3月31日までに取得令和8年4月1日以後に取得
取得価額の基準30万円未満40万円未満
年間の合計上限300万円300万円(変更なし)
従業員数の要件常時使用する従業員500人以下常時使用する従業員400人以下
資本金の要件1億円以下 等同左
申告要件青色申告書の提出同左

年間300万円の上限が据え置かれた点は見落とされがちです。基準額が上がったぶん、40万円近い資産を8つ買えば上限に達します。そして、実務でいちばん間違えやすいのがここです。

⚠ 判定は「事業年度」ではなく「取得等をする日」で行います 国税庁の改正概要は、令和8年4月1日(施行日)の前後で、取得価額の基準と対象法人を取得等をする日で判定すると示しています。つまり3月決算以外の法人では、同じ事業年度の中に30万円基準の資産と40万円基準の資産が混在します。12月決算なら、令和8年1〜3月に買ったものは30万円未満、4月以降に買ったものは40万円未満で判定します。台帳を作るときは、取得日を必ず確認してください。

この特例の適用期限は、同じ改正で3年延長されました。もう一点、令和4年4月1日以後に取得して貸付けの用に供する資産(主要な事業として行われる貸付けを除く)は、ここまでに挙げた3つの優遇措置——10万円未満の一時損金算入・一括償却資産・中小企業者等の特例——のいずれも使えません。使えなくなるのは早期に費用化する扱いであって、通常の減価償却まで否定されるわけではありません。耐用年数にわたって償却していくことになります。

同じパソコンでも、経理方式で答えが変わる

金額の判定に使うのは、その法人が採用している消費税の経理方式による金額です。国税庁は次の例を示しています。

具体例
消費税10%込みで107,800円のパソコンを購入した場合
税抜経理を採用 → 取得価額は98,000円 → 10万円未満に該当し、全額その年の経費
税込経理を採用 → 取得価額は107,800円 → 10万円以上のため、一括償却資産または通常の減価償却

同じ機種を同じ日に買っても、扱いが分かれます。この理屈は10万円・20万円・40万円のすべての境界線で働きます。加えて免税事業者は税込経理しか選べません。国税庁は、免税事業者が税抜きで経理していても、法人税の所得計算は税込経理を適用することになると明記しています。設立まもない法人は、境界線がその分だけ不利に働きます。

また取得価額は、通常1単位として取引される単位ごとに判定します。応接セットはテーブルと椅子で1組、カーテンは部屋ごとの合計額です。机1台8万円を5台なら各8万円で判定できますが、応接セットを分解して「どれも10万円未満」とすることはできません。

有利不利は、一方向ではない

ここまで読むと「使えるなら特例で全額落とすのが得」と思えます。ところが、地方税の側から見ると結論が変わることがあります。

固定資産税のうち、土地・家屋以外の事業用資産にかかるものを償却資産税といいます。毎年1月1日時点の資産を1月31日までに申告し、課税標準額に標準税率1.4%を掛けて課税されます。ここで、国税と地方税の扱いが食い違います。

処理法人税償却資産税
10万円未満を全額経費全額損金申告対象外
20万円未満を一括償却資産に3年で均等に損金申告対象外
中小企業者等の特例で全額損金全額損金申告対象(毎年かかり続ける)
通常の減価償却耐用年数で損金申告対象

東京都主税局の手引きは、中小企業者等の特例について、地方税では金額にかかわらず認められないと明記しています。国税で一発償却しても、償却資産税では資産として残り続けます。評価額は毎年下がっていきますが、取得価額の5%が下限とされているため、その資産を持ち続けるかぎり課税対象から消えることはありません。

同じ用途で機種を選ぶとき
28万円のパソコンを特例で全額損金にする → その年の法人税は軽くなるが、償却資産税は翌年以降も毎年かかる
19万円のパソコンにして一括償却資産にする → 損金算入は3年に分かれるが、償却資産税の申告対象から外れる

ただし、常に一括償却資産の勝ちという話ではありません。まず免税点150万円があります。課税標準額の合計が150万円未満なら償却資産税は課税されないため(この場合も申告自体は必要です)、資産の少ない会社ではそもそも気にしなくてよい論点です。また一括償却資産は、途中で捨てても除却損を計上できず、そのまま3年間の均等償却を続けます。税金のために性能の低い機種を選んで作業効率が落ちれば本末転倒でもあります。会社の規模によって答えが変わる、というのが正直なところです。

何年で分けるかは、自分では決められない

20万円以上の資産(または特例を使わない資産)は、法定耐用年数で償却します。国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」から、中小法人でよく出るものを抜き出します。

資産法定耐用年数
パーソナルコンピュータ(サーバー用を除く)4年
サーバー用の電子計算機、コピー機、その他の事務機器5年
事務机・事務いす・キャビネット(主として金属製/その他)15年/8年
応接セット(接客業用以外)8年
冷房用・暖房用機器6年
普通乗用車/軽自動車(いずれも一般用のもの)6年/4年
看板、ネオンサイン3年
電気設備(照明設備を含む・蓄電池電源設備以外)15年
ソフトウェア(自社利用の一般的な業務用)5年

金属製の事務机が15年というのは、初めて見ると驚く数字です。「まだ償却が終わっていない机が倉庫にある」という状態は珍しくありません。車両は運送事業用・貸自動車業用・自動車教習所用に該当すると別区分ですが、中小法人の社用車は通常「一般用のもの」です。

中古を買ったときは、短くできる

中古資産は、使われてきた年数を考慮して耐用年数を短くできます。実務では簡便法という計算式を使います。

  • 法定耐用年数の全部を経過している場合:法定耐用年数 × 20%
  • 一部を経過している場合:(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
  • 計算結果に1年未満の端数があれば切り捨て、2年に満たないときは2年

「4年落ちの中古車」が話題になるのは、この計算のためです。普通乗用車は法定6年なので、4年経過なら(6 − 4)+ 4 × 0.2 = 2.8年、切り捨てて2年になります。定率法の2年の償却率は1.000ですから、期首に取得して使い始めれば、その事業年度でほぼ全額を償却できる計算です。

ただし減価償却には月割りがかかります。決算まで残り1か月というタイミングで買っても、償却できるのは12分の1だけです。「決算対策で中古車」が期末ぎりぎりに出てきたときは、効果がほとんどないことを確認してから判断したほうが安全です。なお、中古資産を買ったあとに資本的支出(後述)を加えた場合、その金額が中古資産の取得価額の50%を超えると、簡便法は使えません(この場合は法定耐用年数によることになります)。さらに、その資本的支出が新品を買った場合の価額(再取得価額)の50%を超えるときは、見積法も使えなくなります。中古で買って大きく手を入れる予定があるときは、先に確認しておくと安心です。

計算のしかた(定額法と定率法)

償却の方法は主に2つです。

  • 定額法:取得価額 × 定額法の償却率。毎年同じ金額を費用にします
  • 定率法:(取得価額 − 既償却額)× 定率法の償却率。まだ償却していない残高に率を掛けるため、初期に大きく、後半は小さく費用になります

法人が届出をしないときに適用される法定償却方法は、機械装置・車両運搬具・工具器具備品は定率法です。一方、建物・建物附属設備・構築物は定額法しか選べません(建物附属設備と構築物は平成28年4月1日以後に取得したもの)。ソフトウェアなどの無形固定資産も定額法です。

つまり新設法人が何も届け出なければ、パソコンも車も自動的に定率法になります。「毎期の利益を安定させたいので定額法に」という場合は、その資産を取得した事業年度の確定申告書の提出期限までに「減価償却資産の償却方法の届出書」を出す必要があります。届出をしないまま定額法で計算していた、というのは実際に見かける誤りです。

細かいようで効いてくる決まりが2つあります。1つめは、月割りの起算点です。数えはじめるのは買った日ではなく、事業供用日(実際に使い始めた日)です。3月決算の法人が3月に納品を受け、開梱したのが4月なら、その事業年度の償却はゼロになります。期末に駆け込みで発注しても、使い始めていなければ効果はありません。月数は暦にしたがって数え、1か月未満の端数は1か月とします。

2つめは、最後まで償却しても帳簿価額がゼロにならないことです。平成19年4月1日以後に取得した資産は、備忘価額1円まで償却します。台帳に「1円」の資産が並ぶのは正常な状態で、その資産がまだ会社にある印です。

なお法人の減価償却費は、償却限度額の範囲内で損金経理した金額が損金になります。限度額いっぱいまで必ず計上しなければならないわけではありません。

freeeでやること

作業の中心は固定資産台帳への登録です。取引を登録して終わりではなく、資産として別に管理します。入力するのは、資産の名称、勘定科目(工具器具備品・車両運搬具など)、取得価額、取得日と事業供用開始日、耐用年数、償却方法。登録しておけば毎期の減価償却費は自動で計算され、決算に反映されます。少額の減価償却資産・一括償却資産・中小企業者等の特例といった扱いも、償却方法の選択で切り替える形になります(画面の名称や項目は変わることがあるため、実際の操作は最新のヘルプで確認してください)。

入力そのものは難しくありません。実務で差が出るのは、次の2点です。

  • 事業供用開始日を、取得日のまま入れてしまう。納品と稼働の間が空く資産(機械・車両・システム)では、償却額がずれます
  • 取得日を意識せずに特例を選ぶ。令和8年4月1日をまたぐ事業年度では、判定基準が変わります

当事務所でfreee導入を支援する際も、固定資産台帳は口座連携の次に手を入れる場所です。ここが整っていれば、決算と償却資産税の申告で慌てることがなくなります。

捨てたとき・売ったときが、いちばん忘れられる

固定資産の処理で最も抜けやすいのが、手放したときです。買うときは支払いがあるので必ず処理しますが、捨てるときはお金が動かないため、仕訳が起こされないまま台帳に残り続けます。

廃棄したとき(除却)は、帳簿価額(未償却残高)から処分見込価額を差し引いた金額を除却損として損金にします。売却したときは、売却代金と帳簿価額の差額を固定資産売却益または売却損として計上します。

忘れると、損が2つ同時に起きます。計上できたはずの除却損を取り損ねること、そして実在しない資産に対して償却資産税を払い続けることです。1月1日時点の資産を申告する制度上、台帳の内容がそのまま申告書に反映されがちだからです。年に一度、決算か償却資産税の申告のタイミングで台帳を印刷し、現物と突き合わせる時間を取る価値は十分にあります。

物が残っていても、除却できる場合がある

使うのはやめたけれど、処分費用の関係で現物がまだある。こうしたときに使えるのが有姿除却です。法人税基本通達7-7-2は、解体・破砕・廃棄をしていない場合であっても、帳簿価額から処分見込価額を控除した金額を除却損として損金算入できる固定資産として、次のようなものを挙げています。

  • その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産
  • 特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、その製品の生産中止により将来使用される可能性がほとんどないことが明らかなもの

ハードルは高めです。「今後通常の方法により事業の用に供する可能性がない」ことが求められるため、倉庫にしまってあるだけ、いずれ使うかもしれない、という状態では認められません。生産ラインの変更や事業からの撤退など、使わなくなった理由を説明できることが前提になります。

なお、除却を証明する資料(廃棄証明書、産業廃棄物管理票、処分業者の領収書、廃棄前後の写真など)を備えるべきという法令・通達上の明文の定めは見当たりません。ただし税務調査で除却の事実を確認されることは実際にあるため、実務上は残しておくと安心です

一括償却資産だけは、扱いが違う

一括償却資産を選んだ資産は、3年を待たずに廃棄・売却しても、除却損や売却損を計上できません。個々の資産としてではなく、その年に一括した合計額を基礎に償却する制度だからです(国税庁の質疑応答事例でこの取扱いが示されています)。償却資産税がかからないという長所と、途中で捨てても損が立たないという短所は、セットで理解しておく必要があります。

修理代は経費か、資産か(修繕費と資本的支出)

固定資産を持っていると必ず出てくるのが修理代の扱いです。判断の軸は1つです。

  • 元に戻す支出(維持管理・原状回復)→ 修繕費として、支出した年の経費
  • 良くする・長持ちさせる支出(価値を高める、使用可能期間を延ばす)→ 資本的支出として資産計上し、減価償却する

国税庁は、資本的支出になるものの例として、建物の避難階段の取付けなど物理的に付け加えた部分の金額、用途変更のための模様替えなど改造・改装に直接要した金額、機械の部分品を特に品質や性能の高いものに取り替えた場合の通常の取替金額を超える部分を挙げています。

実質での判断が難しいときのために、金額による形式基準が用意されています。

基準内容使える場面
20万円未満/3年周期一つの修理・改良の金額が20万円未満、またはおおむね3年以内の周期で行われることが明らかなもの修繕費としてよい
60万円未満/取得価額の10%以下支出額が60万円未満、または前事業年度終了時の取得価額のおおむね10%相当額以下資本的支出か修繕費か明らかでない場合に限り、修繕費としてよい
継続適用の割合区分支出額の30%と前事業年度終了時の取得価額の10%のいずれか少ない金額を修繕費、残額を資本的支出継続して適用している場合
⚠ 「60万円未満なら修繕費」は誤りです この基準が使えるのは資本的支出か修繕費か明らかでない場合に限られます。形式基準は「迷ったときの逃げ道」であって、「調べなくてよい免罪符」ではありません。建物の避難階段の取付けのように明らかな資本的支出は、60万円未満でも修繕費にはできません。まず実質で判断し、それでも決まらないときに金額を見る——この順番が逆になっている解説をよく見かけます。

資本的支出とされた場合は、原則として既存資産と種類・耐用年数を同じくする資産を新たに取得したものとして扱い、既存資産とは別に償却します。償却資産税でも、資本的支出は本体と区分して申告対象になります。

まとめ:判断の順序

10万円を超えるものを買ったとき、上から順に確認すれば判断できます。

固定資産を買ったときの確認順序
  • 自社の消費税の経理方式(税抜/税込)で、取得価額はいくらか
  • 1単位はどこまでか(セット・部屋単位でないか)
  • 10万円未満/20万円未満/それ以上のどこに入るか
  • 20万円以上なら、取得日は令和8年4月1日の前か後か(30万円基準か40万円基準か)/年間300万円の枠は残っているか
  • 特例を使う場合、償却資産税が毎年かかることを織り込んだか
  • 耐用年数表のどの区分か。中古なら簡便法で短縮できるか
  • 事業供用開始日はいつか(納品日ではない)
  • 固定資産台帳に登録したか

そのうえで、今日からできることを3つ挙げます。

  1. 固定資産台帳を印刷して、現物と突き合わせる。手元にない資産が残っていれば、除却損の計上漏れと償却資産税の払いすぎが同時に起きています
  2. 今期に取得した20万円以上の資産の取得日を一覧にする。令和8年4月1日をまたぐ事業年度なら、30万円基準と40万円基準が混在します
  3. 次に備品を買うとき、19万円台と20万円超で迷ったら、償却資産税まで含めて比べる。課税標準額が150万円未満なら課税されないため、資産の少ない会社では気にしなくて構いません

固定資産の処理は、買った瞬間の判断が数年先まで残ります。逆にいえば、最初の分岐さえ正しく通れば、あとは台帳が計算してくれる領域です。買ったときに5分だけ手を止める、それが一番効率のよい対策になります。

参考情報