電子帳簿保存法の最小対応|電子取引データの保存は3点セットで合格

メールで届いた請求書のPDF、印刷してファイリングしたら元データは削除——その運用、2024年からアウトです。とはいえ、必要な対応は意外と小さく、今日30分で仕組み化できます。個人事業主・ひとり社長がやる最小限だけをまとめます。

対象は「電子でやり取りした」書類だけ

保存が義務になるのは、電子でやり取りした請求書・領収書・見積書などのデータ(電子取引データ)だけです。メール添付のPDF、サイトからダウンロードする利用明細や領収書、ネット通販の購入明細などが該当します。

一方、紙でもらった請求書・領収書は従来どおり紙のまま保存でOK。「全部スキャンしろ」という制度ではありません。分かれ目は中身ではなく「どうやって受け取ったか」です。

紙で受け取った
郵送・手渡しの請求書や領収書
従来どおり紙で保存(変更なし)
電子で受け取った
メール添付PDF・Webダウンロード明細など
データのまま保存が義務

なお、義務自体は2022年1月から始まっており、「紙に出力して保存すれば代わりになる」という経過措置(宥恕措置)が2023年末で終了しました。所得税・法人税の申告をする事業者は、規模を問わず対象です。

合格ラインは2つだけ

要件は細かく書かれていますが、小規模事業者が押さえる合格ラインは次の2つです。

① 消さない・改ざんしない仕組み(真実性の確保)

タイムスタンプの付与、訂正・削除の記録が残るシステムの利用など選択肢はいくつかありますが、いちばん手軽なのは「訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を作って備え置くこと。国税庁がWordのひな形(法人の例・個人事業者の例)を公開しており、社名等を記入するだけで使えます。

② あとから探せること(検索性の確保)

取引年月日(データの授受日でも可)・取引金額・取引先で探せる状態にします。専用システムは不要で、ファイル名に3要素を入れる方法で足ります(例:20260710_株式会社霞商店_110000.pdf)。加えて、税務調査の際にデータのダウンロードの求めに応じられるようにしておけば、範囲指定検索などの高度な検索機能は備えなくてよいとされています。

さらに小規模事業者には緩和があり、基準期間(個人は前々年・法人は前々事業年度)の売上高が5,000万円以下で、税務調査の際にデータのダウンロードの求めに応じられるなら、検索要件そのものが不要になります。ただしその場合も、データ本体の保存と①の仕組みは必要です。

やり方:今日30分の「3点セット」

  1. 専用フォルダを作る:パソコンやクラウドストレージに「電子取引」フォルダを作り、年度別に分ける。メールで届いたPDFもここに集約します。
  2. ファイル名ルールを決める:「日付_取引先_金額」で統一。緩和の対象でも、この付け方にしておけば探す手間が減り、要件面の心配もなくなります。
  3. 事務処理規程を備え置く:国税庁のひな形をダウンロードして記入し、印刷またはデータで保管。税務調査で提示できる場所に置いておきます。

会計ソフトやクラウドストレージに電帳法対応の保存機能がある場合はそちらでも構いません(このあたりは使っているシステムによるケースバイケースです)。

実務でよく見るのは、「メールの添付を開いて印刷まではするが、PDF本体はメールボックスに放置」というパターン。メールを整理した拍子に消えるので、届いたらその場で専用フォルダに移す習慣が肝心です。

よくある誤解

  • 「印刷してファイリングすればOK」→ 原則NG。2024年以降は、出力した紙だけの保存は認められず、元のデータ本体の保存が必要です(紙の控えを併用するのは自由です)。
  • 「猶予措置があるから何もしなくていい」→ 誤解。猶予措置は、システム整備が間に合わない等の相当の理由があり、調査時にデータのダウンロードと出力書面の提示・提出に応じられることが前提。つまりデータを消さず保存しておくこと自体は免除されません

まとめ

紙で来たものは今までどおり、電子で来たものはデータのまま。「専用フォルダ+ファイル名ルール+事務処理規程」の3点セットを今日作れば、最小限の対応は完了です。

参考情報

本記事は2026年7月時点の一般的な情報です。要件は変わる場合があるため、最新は国税庁でご確認ください。