AIは「敵」か「武器」か——ソロ士業がAIを使いこなす時代の話
AIの普及で士業の仕事はなくなるのか?公認会計士・税理士として実際にAIを使い倒している立場から、正直に考えてみました。脅威論よりも、どう使いこなすかが大事だと思っています。
ソロ士業として、AIについて正直に書きます
「AIが税理士の仕事を奪う」というニュースを見るたびに、どこか他人事のように感じていた時期がありました。でも最近は全く逆で、AIなしでは今の仕事量をこなせないと感じています。
この記事では、公認会計士・税理士として実際にAIを日常業務に組み込んでいる立場から、正直な気持ちを書いてみます。
何がどう変わったか——実際の話
調べ物の速度が変わった
税法の解釈や判例を調べる作業は、以前なら国税庁のサイトや法令データベースを行き来して1〜2時間かかることもありました。今はClaudeに「この条文の意味と最近の実務上の取り扱いを教えて」と聞くと、出発点となる情報を5分で整理できます。
もちろん、最終判断は自分でします。AIが示す情報には誤りもあるし、最新の改正に追いついていないこともある。でも「調査のスターター」として使う分には、圧倒的に効率が上がりました。
文書作成の質が上がった
お客さまへの説明資料や、ブログ記事の構成を考えるとき、AIと対話しながら進めると考えが整理されます。「この説明、分かりにくくないか」「もっとシンプルに言えないか」と壁打ち相手として使えます。
このブログ記事も、最初の構成案をClaudeと議論しながら決めました。
単純作業が減った
Excelのマクロ作成、スクリプトの修正、データ整理——コードが書けなかった自分でも、「こういう処理をしたい」と説明すれば、ほぼそのまま動くコードを書いてくれます。e-Tax/eLTAX関連の文書整理スクリプトも、AIのサポートなしには作れなかったと思います。
「AIに仕事を奪われる」論への正直な見解
私の考えは「一部はその通り、でも全部じゃない」です。
AIが得意なことは確かにあります。
- 大量の情報を素早く整理・要約する
- 繰り返しの多い作業を自動化する
- 複数の選択肢を瞬時に比較する
これらは、かつて「専門家の仕事」とされていた部分も含みます。例えば、確定申告の基本的な書き方を調べるなら、AIに聞けば十分なことも増えてきました。
でも、AIが苦手なこともあります。
- お客さまの「言葉にならない不安」を察して対応すること
- 「このケースではリスクをとってでも攻めるべきか」という判断
- 信頼関係の構築と、継続的な伴走
数字を扱う専門家として、「数字の後ろに何があるか」を読む力——これはまだ人間にしかできないと感じています。
ソロ士業がAIを使う理由
大きな事務所であれば、スタッフに任せられることも、一人だとすべて自分でやらなければなりません。AIはある意味、「仮想スタッフ」として機能してくれます。
調査をまとめてくれるアシスタント、文章を確認してくれる編集者、コードを書いてくれるエンジニア——これらを一人でまかなうのは無理でも、AIのサポートがあれば近いことができます。
ソロだからこそ、AIを活用する動機は強いと思っています。
AIツールとの付き合い方で気をつけていること
1. 最終判断は必ず自分でする
AIの出力をそのまま信じると失敗します。特に税法の解釈や数字の計算は、必ず一次情報(法令・判例)に当たって確認します。
2. 「何を聞くか」が重要
AIの回答の質は、質問の質で決まります。「この取引の税務処理は?」より「個人事業主が社用車を購入した場合の減価償却の処理方法と、法人成り後の扱いの違いを教えてください」のほうが、はるかに使える回答が返ってきます。
3. プライバシーに注意する
お客さまの実名・口座情報・具体的な税務情報はAIに入力しません。匿名化・抽象化して使うのが鉄則です。
まとめ
AIは「脅威」でも「魔法の杖」でもありません。道具です。
使う人が目的を持って使えば強力な武器になるし、使い方を間違えれば誤情報に振り回される。それだけのことだと思っています。
「AIを使いこなす専門家」と「AIに仕事を奪われる専門家」の差は、テクノロジーへの拒否感ではなく、どれだけ早く道具として使いこなせるかだと感じています。
まだ試していない方は、ぜひ一度、日常業務の中で小さな実験をしてみてください。思った以上に、日常が変わるかもしれません。
当事務所では、AI・DXの活用相談も承っています。「何から始めればよいかわからない」という方も、ぜひお気軽にご相談ください。